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もう1度だけ

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もう1度だけ

河口湖にて

いよいよ関東も梅雨入りしズラズラと並んでいた晴れマークが雨と曇りばかりになってしまいました。今年は水不足の心配はなさそうですね。皆様、いかがお過ごしでしょうか。どうぞ体調管理にお気をつけてお過ごし下さいませ。

またまた私と娘は水曜日、早朝から親戚の出張に便乗して埼玉県と山梨県に行って来ました。山梨は母を連れて泊まった河口湖以来、3年ぶりでした。実は亡くなった私の姉は山梨県都留市の大学出身でした。3年前に母と河口湖畔のホテルに着いた時、少し足を伸ばせば姉が暮らした街だとわかっていて、でも私にはどうしてもそこに行く勇気がありませんでした。姉を亡くした時、私が思い出す姉との思い出の殆どは都留での出来事で、もう思い出しか残っていない事が辛すぎてどうしても行く気にはなれませんでした。あの辛い日から随分経って今回、「行ってみる?」の問い掛けにやっと頷けた私でした。

姉が大学生活を始めた時、私は高校1年生でした。夏や冬の長いお休みが始まると私はいつも姉のアパートに転がり込み、始業式の前日まで居座っていました。大学生のフリをして姉の隣で夏期講習を受けた事もありました。姉のアルバイト先で私もアルバイトをしました。2人でバスに乗り県内を観光したり、2人で晩ご飯を作ったり、2人で狭い部屋に寝転んで朝まで将来について話したり・・・姉の青春時代は私の青春時代でもありました。

私はもうすっかり吹っ切れたつもりでいました。それなのに今回、車が姉のいたアパートへの細い坂道を通った時。。遠い昔、アルバイト先から帰る途中この坂道で姉が、「灯油がまだあったかな。もしなかったらまた私の妹が風邪をひいてしまう。」って。

都留の冬はとても寒くニットの手袋の両手を何度も何度も擦り合わせ白く細い息を吐きながら姉が言った、あの時の優しい顔を思い出して。

姉が今、坂道を登って来ているような気がして。

あぁ、もう1度だけで良いから、

あの声が聞きたい。  

どうして・・・