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親子だもん

親子だもん

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母の具合が良くないなと感じたのは、父の病状が悪化して入院させて間もなくの去年の春先の事でした。私の元に交番のお巡りさんから迎えにきてあげて下さいというお電話が入り、急いで駆けつけお話をお聞きした時でした。

 

母は数点の食品をかごに入れてレジを通し、また数点選んではレジを通しを数回繰り返し、最後はレジを通さずにお店の外に出てしまったようでした。何度も同じ事を繰り返すお婆さんを不思議に思った店員が、母の最後の行動を見届け交番に連絡されたのだそうです。私の顔を見るなり母はホッとした顔をして、「 来てくれた。ごめんね。何が何だか。」母は何1つ覚えていませんでした。

 

私は母に、「 大丈夫よ。」って声を掛けて、そして・・・。

 

皆さんにご迷惑をお掛けした申し訳なさや、あの気丈な母がという寂しい思いや、これから起こるであろう大事に対する不安といったものが一気に込み上げてきて、ハンカチで顔を覆って泣きました。その様子を見ていた年配のお巡りさんが、「 私にも同じ様な母がいます。大変ですけど気を楽に。」そう優しくお声を掛けて下さって、そうだ、私が泣いてる場合じゃないと。

 

あの頃から良い日悪い日を交互に繰り返しながら、母は気力を振り絞り何とか1人で今を生き、私の頭の片隅にはいなかった筈の両親がいつもいて、そんな事で家族を実感するようになりました。恥ずかしいお話ですが、母がこんな風になって私は初めて母が鰻とレバーが苦手で、焼き立てのメロンパンが大好物だと知りました。

 

そんな私なのに、
母は週に2.3度出勤前に日用品を買って届ける私を楽しみに待ち構えていて、会わなかった数日間の出来事をまるで子供のように話して聞かせるのです。

 

「 来てくれてありがとう。」って母が。
私は、「 3日前にも来たけどね。」って。
「 そう?こうして来てくれるのが1番嬉しい。」
私は気の無い返事をしながら買い込んだ食材を、母に1つひとつ確認させては冷蔵庫に入れ、急ぎ足で各部屋をチェックして、ヘルパーさんからのメッセージに目を通しサインをして、「 じゃ、忙しいから行くね。大丈夫かな?」って。

 

たった10分程の滞在時間。玄関で靴を履きながら、初めて母の顔を見たりして・・・。

 

あ、ヘルパーさんが何か書いてたけど。
うん、読んだよ。サインもしておいた。
あらそう?もう読んだの?早いね。
今日中に食べなきゃいけないもの解ってる?
えっと、お刺身。
そう、お刺身。あと小まめに水分補給ね。
はい。すいぶん。
補給。
はい。ほきゅう。
水分補給。
すいぶんほきゅう。
「 じゃね。また来るから。」ってバタバタと。

 

「 ここで良いよ、送って来なくて良いから。」って言うのに、母はエレベーターの前までノコノコついてきて、「 お店にお客様来てくれてるの?」って。笑

 

どうしてそんなに疲れた顔してるの?
顔色が悪いよ。青いね〜。
お休みの日に行ってあげようか?
背中押してあげたいわ。押してあげようか?
私はもうすっかり次の事を考えていて、「 じゃ。」って。

 

今朝、やっと眠り始めた頃に母がやって来た。
入ってくるなり、「 ちょっとここに横になってごらん。」
私が朦朧としながら床に横になると、「 約束したからね、押してあげるって。」

 

あれ?背中押してあげるって言ったの覚えてたの?
覚えてるわよ。親子だもん。
へ〜、覚えてたの?
親子だもん。

 

熱を出した私を背負って母が病院に連れて行ってくれた、遠い昔のあの夜を思い出した。

 

ごめんね。
メロンパンが好きだって知らなくて・・・
本当にごめんね。