頑張れマスター
秋も深まり夜寒を覚える季節になりました。5月に登ったまだ積雪の旭岳が紅葉狩りで賑わっている様子をニュースが伝えていて、日本らしい美しい景色と懐かしさに思わず見入ってしまいました。皆様いかがお過ごしですか。
今週の金曜日は3回目の化学療法です。2回目が終わりホッとしたのも束の間で、3週間はあっという間に過ぎていきます。聞くところによると副作用は人それぞれで、重くて寝込んでしまう人や殆ど症状が出ない人もいるようです。私は辛い時期もこれ位なら軽い方だと思い込んで過ごす事にしていて、単細胞にはこの勝手な思い込みがとても効果的だと感じています。癌に罹患してから私はネット上の癌関連を一切シャットアウト、どうしても知りたい情報だけ、主治医と身内のネットのプロを頼ることにしています。人は人、私は私。
知らぬが仏です。😽
昨夜、マスターが自宅まで来てくれました。書類を持って何度も来てくれているのに都合が合わず家族任せで、私がマスターに会うのは開腹手術以来3か月ぶりでした。マスターから店舗に関する報告を一通り受けた後、話題は私の病状へと移りました。マスターは癌は、というか抗がん剤治療は昔テレビドラマで見た様な洗面器を抱えて嘔吐したり、鏡の前で髪に触るとバサっと脱けたり、痩せ細って青白い顔といったイメージをしていたのだそうです。私も抗がん剤って皆んなそうなるんだと思っていました。ところが目の前の私はスタスタ歩きケラケラ笑い、「優秀なのよ、最近の吐き気止めって。全然吐き気しないの。それどころか浮腫もあるし、何とかって点滴の成分で食欲が半端なくて太ったわ。今のところ、眉毛もまつ毛も抜けていないしね。」なんて言う。癌患者らしくない癌患者で拍子抜けしたのか、それとも心配を掛けまいと頑張っている風に思ったのか、何故かマスターは私が何か喋る度に段々深く俯向き目を合わせなくなりました。
「あのね、癌になってから1度だけ落ち込んだんだけどね。あれ以来は1度も落ち込んでないのよ。強がりで言ってるんじゃなくて。」
「そうなんですか。自分だったら鬱になってます。」
「癌の事は考えない事にしてるのよ。治療はプロに頑張ってもらって私は体調管理だけ。毎日面白いことを探して笑う様にしてる。」
「そうですか。自分だったら・・・。」
「副作用が楽になったら2泊でプチ旅行してるのよ。頑張ったご褒美っていうか、励みにね。」
ほんと久し振りに色々話して、「じゃもうそろそろ。」って言って立ち上がったら、マスターが、「寂しいです。」ってポツリ。
「は?」
「お店で1人、誰か来てくれないかなぁ〜って待って・・・」
「チャンスよ、マスター。新曲作りなさい!」
くらくらくらくら、暗っ!!😆