銀座のトリル 03-3572-8228

Author: もあママ

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テーブルを持ち上げようと指に力を入れたら、爪が3本も折れてしまいました。

爪くらいと思われるかもしれませんが、私にとって爪は髪の毛以上に大切な物なのです。

水割りをお作りする時やライダーで火をおつけする時など、爪が長いのと短いのではホステスらしさが全然違うと勝手に思っているからです。笑

慌てて行きつけのネイルサロンに予約の電話をしたら担当の方が長期休暇という事で、「銀座に支店がありますので電話してそちらの店長に担当する様に伝えましょうか?」と言って頂き、「大丈夫でした。直ぐに行けますか?」「行きます、行きます。」となり急いで行ったのですが・・・

10代後半の若いスタッフの女性に事情を説明したら、「そんな連絡入ってないですぅ。それにぃ〜今日は店長が休みなんですよ〜。」って言う。

「え?!」

「どうしますか?帰りますか?私で良ければやりますけどぅ〜。」

帰りますか?って。笑

超不安立つだけど〜お願いする事にしたぁ〜。「5時半までに仕上がりますか?」

「大丈夫ですぅ。どのデザインにしますか?」私はサンプルの中から1番簡単そうなデザインを選びもう1度、「5時半までにお願いしますね。」と伝えた。

それがいつまで経っても爪を磨くばかりで、ちっとも先に進まない。

「5時半に間に合いますか?大丈夫ですか?」「大丈夫ですぅ。」

暫くして、「これじゃ終わりませんよね。」

「大丈夫ですぅ〜。」

そして完成には程遠い工程の途中で彼女は言った。

「5時半ですぅ。今日はここまでなんで。」

何が?

店内にて

母が分厚くて重い昔のアルバムを何冊も本箱に並べていたので、軽いフォトブックを買って来て娘と整理をしました。

母の症状は緩やかに進行していき、いつか全ての記憶はなくなるのかもしれません。

それでも家族やお友達の写真が直ぐに見られる場所にあれば、少しでも進行を遅らせる事が出来るかもという娘心からでした。

新しいアルバムを母に手渡し反応をみたら、その日の母は写っている殆どの人に見覚えがなさそうでした。

アルバム効果か、その翌日から母は私の顔を見る度に神戸の弟を自宅に招待したいと言い始めました。

「ベッドは1つしかないけど姉弟だから床にお布団敷いてゴロ寝で良いんだから。 もう長いこと弟に会ってないから会って話がしたいわ。来るように言ってくれない?」「わかった。でもまだ寒いからもう少し暖かくなってきたら来てもらおうね。」

母は首を縦に振ってくれませんでした。

何度も何度も顔を合わせる度に同じ事を言うので、これはもう私が連れて行くしかないのかなと思い始めていました。そんなところに神戸で日帰りの仕事があるから連れて行こうかと嬉しい親戚からの申し出が。

助かった!笑

母に言うとその事ばかり言い始め質問責めに合ってこちらの頭が壊れるので、出発当日まで内緒にする事にしました。

トイレの心配は全くないこと、最近は私の家に来て10分位で迷惑になるから帰るねって帰り支度を始めること、そんな母を引き止めて座らせて数十回も繰り返している事を私は叔父に説明しました。

「叔父ちゃんにも同じ事をすると思うの。迷惑をかけてしまう、それが物凄く心配だわ。」

叔父は大笑いして、「お姉ちゃん、やるやんか。心配せんといて。俺ら姉弟なんやから。」

良かったね、お母さん。

やっと会えるよ。

私・店内にて

「ママも趣味があれば良いのにね。」と娘が言う。

お仕事と母の事と家事で一杯いっぱいの私を娘は傍でしっかり見ていてくれる。

子育てが一段落した頃見つけた趣味は、家事を放棄するほど熱中し過ぎて断念した。何か始めると他の物が見えなくなってしまう私は、今は趣味は見つけちゃういけないと思ってる。

週末のお昼過ぎ、食料を買い込み母の家を訪ねた。母はパジャマ姿で嬉しそうに出迎えてくれた。今か今かと待っていてくれたようだった。母にパンを食べさせておいて、クローゼットの整理をした。

前日浴室に干しておいた母の靴下が洗濯用ハンガーのままブラウスの間に吊ってあった。その隣には下着とバスタオル。

整理した?笑

趣味なんて何もなくても良い。

そんな事、今の私にはどうでもいい。

明日もまた整理しよう。

趣味はお婆ちゃんで良い。

マスター・店内にて

日が長くなってきました。春一番も吹きました。暖かい春はもう目の前ですね。皆様いかがお過ごしですか。

何年か前までトリルは私と娘だけでした。娘には本職があるのでトリルに来られない日もあり、私だけいう夜も度々ありました。いくら夜のお仕事が長い私でも、深夜に初めてお会いする方がいらっしゃるとドキドキが止まりませんでした。お話の最中にいきなり立ち上がられた時があって、押し倒されるのかと身構えたくらいです。

そんな事もマスターが来てくれるようになってからすっかりなくなっていました。マスターは武道の有段者だと私に言いました。僕は怒ったら物凄く怖いんだって、そんなことも言いました。マスターという職業は優しいだけでは務まりません。私はマスターの言葉を聞いて、安心して初対面のお客様に接客出来るようになりました。

ところがマスターは、そんな事で?というような事で直ぐにお腹を壊します。おトイレ目掛けて一目散に飛んで行きます。日比谷公園からの帰りに帝国ホテルのおトイレに飛んで行った事もあります。スーパーでお買い物中にも遠くまで飛んで行き、先日は並木通りから三越まで飛んで行きました。 私はマスターが飛んで行くのを何十回も見ました。

「ちょっと離れます。」と言う時は飛んで行く時です。あっという間に姿が見えなくなります。

幻滅です。笑

店内にて

母がぐったり寝込みました。

インフルエンザです。

お薬を飲ませ平熱に戻ったら服を脱がせて、温めたタオルで頭から足の爪先まで拭きついでに保湿クリームを塗りました。

ベッドの上の母をコロコロ転ばしながら拭いていたら、「ごめんね、こんな病気になってしまって。ありがとう、良くしてくれて。」

「心配しなくても大丈夫だよ。もう直ぐ良くなるからね。元気出していこう〜。」って言ったら、「 私はこの病気のままで良いけどね。」って。

自己中か!

母は鰻が苦手だという事を、私は数年前に初めて知りました。母がビーズや刺繍の可愛らしいお洋服が好きだって事も知りませんでした。こんなに華奢で色白だった事も知りませんでした。母が介護認定を受けて私は初めて母の背中を見ました。私を背負ってくれた背中はもっと、

大きかったはずでした。