母の説明文

母の説明文

母に長い手紙を書きました。

 

 

昔から何かというと母は直ぐに手紙を書く人で、大学で自宅を離れた私の元にも何度も便りが届いたものでした。当時の私の頭の中は新しい生活への期待しかなく、母からのそれはかなり面倒くさいものだったけれど。

 

 

最近になり母が時々私を忘れ、どこかの親切な人だとしか思わなくなった今になって、私は無性に母に手紙が書きたくなったのです。今更、何を書いて教えようというのか。それこそ今更・・・なのですが。

 

 

母は、「 手紙?私に?今読んで良いの?」って10代の女の子みたいに喜んで、嬉しそうに声に出して読み始めました。私の書いた手紙は手紙というよりまるで母の説明文で、母は途中で何度も、「 どうしてこんなこと知ってるの?」と聞いてきました。母が父の事業を手伝って一生懸命働いていた件になると、「 そうだった。あの時は大変だった。楽しかったけどね。」と言って笑いました。最後まで読み終わると、「 ちょっともう1回読んでみようかな。いい?」って、結局母は3回も読み返して、やっぱり、

 

 

「 あの時は大変だった。楽しかったけど。」

 

 

ってまた同じところで笑って。

 

 

翌日、母がお世話になっている施設を訪ねてみました。陰からそっと母を見たら、ミッソーニの服のおばあちゃまと何かの話で盛り上がってる。「 そんなことしたら蹴っ飛ばされるわよ。」なんて大笑いしてる。

 

 

母の部屋を覗いたら、昨日の私の手紙が封筒に入ってテーブルの上にポツリ。昨日、私がそこに置いた、そのままに。

 

 

母は今を生きてるんだ。小さな子供のように。

 

 

「 人の心配ばっかりしてないで、あなたも一生懸命やりなさいよ。」って言われた気がした。少し寂しくて、涙が出そうになった。置いていかれたようで、涙が・・・

 

 

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